税理士に創業融資代行を依頼するメリット・デメリット【2026年完全ガイド】
申請実務
公開: 2026年4月7日
更新: 2026年9月16日
読了目安: 3分
税理士に創業融資代行を依頼する前に知っておきたいこと
この記事の結論
税理士に創業融資を依頼するメリットと、税理士法上の独占業務、認定経営革新等支援機関としての役割、登録の確認方法を解説。報酬額は自由化されており本記事では断定しません。公庫の創業融資は税理士に頼まなくても直接申請できます。
創業融資の相談先として税理士を検討する際、まず押さえておきたいのは「税理士に法律上できること・できないこと」と「相場としての金額」を切り分けて理解することです。税理士には独占業務があり、これは税理士法という法律で明確に定められています。一方で「依頼するといくらかかるか」については、税理士の報酬を定める公的な基準(公定価格)が存在しないため、本記事では具体的な金額を断定しません。
本記事で確認できる範囲
- 税理士だけができる業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)が、税理士法第二条・第五十二条でどう定められているか
- 創業融資の相談・事業計画づくりで、税理士に依頼できることの範囲(付随業務として認められている財務書類の作成など)
- 「認定経営革新等支援機関」として登録された税理士が、日本政策金融公庫の融資でどう関わるか
- 依頼しようとしている相手が実在の登録税理士かどうかを、公式サイトで確認する方法
- 日本政策金融公庫の創業融資は、税理士などの代行を挟まなくても事業者本人が直接申請できること
税理士への依頼費用(顧問料・成功報酬など)について、業界団体や官公庁が公表している統一的な料金統計は確認できませんでした。費用体系や金額は税理士事務所ごとに個別に設定されているため、正式な金額は必ず依頼先に直接見積もりを依頼してください。
税理士の業務範囲|税理士法で定められた独占業務
税理士に何を依頼できるかを理解するには、まず税理士法で定められている業務範囲を知る必要があります。税理士法第二条は、税理士の業務として次の3つを定めています。
| 業務 | 税理士法上の内容(第二条第一項) | 創業融資に関わる具体例 |
| 税務代理 | 税務官公署に対する申告・申請・請求・不服申立てなどについて、代理し、又は代行すること | 確定申告や青色申告承認申請の代理など |
| 税務書類の作成 | 税務官公署に提出する申告書・申請書・請求書などを作成すること | 確定申告書・青色申告承認申請書の作成 |
| 税務相談 | 租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応じること | 開業後の税額の見込みについての相談 |
この3つは税理士だけに認められた独占業務です。税理士法第五十二条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定めており、税理士資格を持たない者(行政書士や民間コンサルタントを含む)が税務代理・税務書類の作成・税務相談を報酬を得て行うことはできません。条文全文はe-Gov法令検索「税理士法」で確認できます。
創業融資の相談に直結する「付随業務」
税理士法第二条第二項は、税理士業務に付随して「財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務」を業として行うことができると定めています。創業融資の審査で提出する収支計画や資金繰り表、決算書・試算表の作成支援は、この付随業務の範囲に含まれます。次のセクションで、この付随業務が創業融資の相談で具体的にどう活きるかを説明します。
創業融資の相談で税理士に依頼できること
前セクションの独占業務・付随業務を踏まえると、創業融資に関して税理士に依頼できることは主に次の範囲です。
- 財務書類の作成(税理士法第二条第二項の付随業務):収支計画・資金繰り表・決算書や試算表など、融資審査で提出する数値資料の作成支援
- 会計帳簿の記帳の代行(同項):開業後の日々の記帳を代行してもらい、事業計画の数値との整合を保つ
- 税務相談(同条第一項):開業時の税務上の届出や、事業計画に織り込む税額の見込みについての相談
認定経営革新等支援機関としての関わり
税理士が「認定経営革新等支援機関」として中小企業庁の認定を受けている場合、日本政策金融公庫の融資で金利面の要件に関わることがあります。日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の特別利率Aの適用要件の一つとして、公式サイトには次のように記載されています。
日本政策金融公庫の公式記載(特別利率Aの要件の一つ)
「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用しているまたは適用する予定の方であって、自ら事業計画書の策定を行い、認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、中小企業診断士など)による指導および助言を受けている方
特別利率Aは、女性・35歳未満・55歳以上の方など他の条件でも適用されるため、認定経営革新等支援機関の指導・助言は数ある適用条件のうちの一つという位置づけです。実際の利率は次のとおりです(無担保・税務申告を2期終えている方の場合、日本政策金融公庫「金利情報」より)。
| 利率名称 | 年利(%) |
| 基準利率 | 3.80~5.40 |
| 特別利率A | 3.40~5.00 |
令和8年9月1日現在。利率は金融情勢によって変動するため、最新の数値は必ず公式サイトでご確認ください。融資限度額は7,200万円です(新規開業・スタートアップ支援資金、日本政策金融公庫公式サイトより)。
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは|税理士との関係
「認定経営革新等支援機関」(認定支援機関)は、中小企業等経営強化法に基づき中小企業庁が個別に認定する制度です。中小企業庁「認定経営革新等支援機関」によると、税務・金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に関する実務経験が一定レベル以上の個人・法人・中小企業支援機関等を認定することで、中小企業に対して専門性の高い支援を行う体制を整備する制度とされています。税理士はこの認定を受けられる専門家の一つですが、税理士であれば自動的に認定されるわけではなく、個別に申請して認定を受ける必要があります。
支援の流れ(中小企業庁公式サイトより)
- 中小企業・小規模事業者が経営課題を抱える
- 認定経営革新等支援機関検索システムなどで支援機関を選定する
- 認定経営革新等支援機関に相談する(経営状況の把握、事業計画の作成支援、事業計画の実行支援)
- 事業計画を実行する
- モニタリング・フォローアップ(巡回監査の実施・改善策の提案など)を受ける
依頼予定の税理士が認定を受けているか確認する
個々の税理士・税理士事務所が認定経営革新等支援機関として登録されているかどうかは、認定経営革新等支援機関検索システムで検索できます。認定の有無は融資の可否そのものを左右するものではありませんが、前セクションの特別利率Aのように金利面の要件に関わる場合があるため、依頼前に確認しておくと判断材料になります。
「認定支援機関だから採択率が上がる」という断定はできません
認定経営革新等支援機関の関与によって融資の採択率がどの程度変わるかについて、日本政策金融公庫が採択率の統計を公表しているページは確認できませんでした。認定支援機関の関与は、特別利率Aなど一部の金利要件に関わる制度上の位置づけであり、審査結果そのものを保証するものではありません。
依頼する税理士が実在の登録者か確認する方法
税理士法上、税理士業務は税理士・税理士法人しか行えない独占業務です(前述の第五十二条)。契約前に、依頼しようとしている相手が実在の登録税理士かどうかを公式サイトで確認することをおすすめします。
税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会)
税理士情報検索サイトは、日本税理士会連合会が公式に運営する検索サイトです。サイト上には「税理士及び税理士法人は、必ず事務所所在地を管轄する税理士会に所属し、日本税理士会連合会に登録されています」と明記されており、氏名や事務所所在地などから登録の有無を検索できます。掲載情報は令和8年8月31日時点のものと表示されており(令和8年9月4日付の更新履歴で確認)、概ね月1回程度の頻度で更新されています。
税理士会の相談窓口も利用できる
依頼先を自分で探す際は、日本税理士会連合会の「税理士に相談する」ページも入り口の一つになります。契約前に税理士情報検索サイトで登録を確認し、認定経営革新等支援機関としての登録有無も併せて確認しておくと、依頼先選びの判断材料が揃います。
税理士への依頼費用はいくら?|金額を断定できない理由
税理士への創業融資代行・顧問契約の費用について、本記事では具体的な金額を掲載していません。理由は次のとおりです。
税理士報酬には公定価格(法律上の基準)がありません
税理士法の条文を確認したところ、税理士の報酬額の基準を定める規定は見当たりませんでした(同法が定めているのは、税理士が報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止など、別の文脈での「報酬」に関する規定のみです)。税理士の報酬は各税理士・税理士法人が自由に設定するものであり、全国一律の相場や公的な料金表は存在しません。
そのため「顧問契約ありなら月額◯万円」「成功報酬は融資額の◯%」といった具体的な金額の相場について、本記事では断定しません。実際の費用は事務所の方針・依頼する業務の範囲(融資代行のみか、開業後の顧問契約も含むか)によって大きく異なります。正式な金額は、必ず複数の税理士事務所に個別に見積もりを依頼し、契約書に費用の算定根拠(着手金・成功報酬・顧問料それぞれの発生条件)が明記されているかを比較して確認してください。
税理士・行政書士・融資コンサルの違い|法的根拠で比較
創業融資の相談先には税理士のほかに行政書士や民間の融資コンサルタントもいます。それぞれ何ができるかは、根拠となる法律が異なります。数値での比較(採択率や費用の優劣)は公式統計が確認できないため行わず、法的な業務範囲の違いのみを整理します。
| 項目 | 税理士 | 行政書士 | 融資コンサル(民間) |
| 資格の根拠法 | 税理士法 | 行政書士法 | 法定資格なし |
| 税務代理・税務書類の作成・税務相談 | できる(税理士法第二条の独占業務) | できない(税理士法第五十二条により無資格者は不可) | できない |
| 官公署提出書類・権利義務や事実証明に関する書類の作成 | 税務書類のみ(税理士法第二条) | できる(行政書士法第一条の三の独占業務) | 資格上の位置づけなし |
| 認定経営革新等支援機関になれるか | 個別に認定を受ければなれる | 個別に認定を受ければなれる | 認定を受けていれば可能(個別確認が必要) |
| 登録の確認方法 | 税理士情報検索サイト | 行政書士会員検索 | 統一的な公式名簿なし |
日本行政書士会連合会「行政書士の業務」によると、行政書士が作成できる「事実証明に関する書類」の例として貸借対照表・損益計算書等の財務諸表が挙げられており、創業計画書の作成支援は行政書士も対応できる範囲とされています。ただし税務相談・税務代理は税理士法上の独占業務のため、行政書士は行うことができません。行政書士への依頼を検討する場合は行政書士に創業融資代行を依頼する方法、融資コンサルとの違いは創業融資コンサルとは、専門家タイプ別の比較はタイプ別比較もあわせてご覧ください。悪質な業者を避けるための注意点は悪質な融資コンサルの注意点にまとめています。
日本政策金融公庫の創業融資は税理士に頼まなくても申請できる
税理士への依頼を検討する前に知っておきたいのは、日本政策金融公庫の創業融資は代行を挟まなくても事業者本人が直接申請できるという点です。
創業サポートデスク(全国152支店)
日本政策金融公庫「創業サポートデスク」は、平成24年4月に全国152支店に設置された窓口です。公式サイトには「専任の担当者が、創業計画書の立て方や融資申し込みの流れ、融資制度等について丁寧にお応えします」と記載されており、最寄りの支店への電話または予約で相談できます。
創業計画書のテンプレートも公開されている
日本政策金融公庫「創業計画の書き方」のページでは、創業計画書のPDF・Excel様式が公開されているほか、書き方を解説する動画も用意されています。
自己資金の目安も公式データで確認できる
日本政策金融公庫「Q&A」には「自己資金の目安については、公庫が融資先の創業企業を対象として実施した調査(『新規開業実態調査』)によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度となっています」と記載されています。自己資金比率について具体的な目標数値を検討する際は、税理士等に相談する前にこの公式データを確認できます。
申込自体もインターネットで完結できる
日本政策金融公庫「インターネット申込」は24時間365日受け付けており、事業者本人がオンラインで申込を完結できます。
まとめ
税理士への依頼は、財務書類の作成支援や税務相談など専門的なサポートを受けたい場合の選択肢の一つです。日本政策金融公庫への申請そのものは、支店の創業サポートデスクでの相談や公開されているテンプレート、インターネット申込を使えば、専門家に依頼しなくても事業者本人が進めることができます。
税理士への依頼を検討すべきケース
ここまでの内容を踏まえ、どのような場合に税理士への依頼を検討する価値があるかを、一般化したパターンとして整理します(個別の企業名・金額を伴う実例ではなく、業務範囲に基づく一般的な整理です)。
パターン1:開業後も継続的な税務サポートが必要な場合
開業後は確定申告や消費税申告など、継続的な税務対応が必要になります。融資の相談と合わせて税理士に依頼すれば、税理士法上の独占業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を開業前後で一貫して依頼できます。
パターン2:認定経営革新等支援機関の関与が必要な制度を使いたい場合
日本政策金融公庫の特別利率Aなど、認定経営革新等支援機関の指導・助言が要件の一つになっている制度を利用したい場合は、認定を受けている税理士に相談する意味があります。依頼前に認定経営革新等支援機関検索システムで登録を確認しておきましょう。
パターン3:財務書類の整備に不安がある場合
収支計画や資金繰り表など、数値面の資料作成に不安がある場合は、税理士法第二条第二項の付随業務(財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行)の範囲で支援を受けられます。
許認可の取得が必要な場合は行政書士も選択肢
飲食店の営業許可や建設業許可など、許認可の取得が必要な事業の場合、許認可申請書類の作成は行政書士法上の業務範囲です。税理士は許認可申請を扱えないため、許認可と融資相談を一括で依頼したい場合は行政書士への依頼もあわせて検討してください。
当サイトでは、創業融資の相談実績がある専門家を紹介しています。税理士に限らず、行政書士や中小企業診断士など、依頼したい業務範囲に応じた専門家を探すことができます。地域別の情報は創業融資代行 東京・創業融資代行 大阪もご覧ください。成功報酬型の仕組みについては創業融資代行の成功報酬型とはで解説しています。
出典・参考情報
最終更新日: 2026年9月16日。制度・利率・登録情報は変更される場合があります。必ず各公式サイトで最新情報を確認してください。本記事は税理士への依頼を推奨または非推奨するものではなく、法的な業務範囲と一次情報を整理したものです。