行政書士に創業融資を相談するには|業務範囲とできることの線引き
申請実務
公開: 2026年4月7日
更新: 2026年9月16日
読了目安: 3分
行政書士に創業融資を相談する前に知っておきたいこと
この記事の結論
行政書士は行政書士法にもとづき官公署提出書類の作成・提出代理ができる資格者ですが、税務書類は税理士法、法律事務の代理は弁護士法の範囲です。報酬は自由化されており本記事では金額を断定しません。日本政策金融公庫への創業融資は行政書士に依頼せず直接申請できます。
創業融資の準備を進めるなかで「行政書士に融資代行を頼めるのか」を調べている方に向けて、行政書士法の条文にもとづいて業務範囲を整理します。「融資代行」という言葉は一般に広く使われていますが、法律上の正式な業務区分ではありません。実際に行政書士が行えるのは、行政書士法が定める書類の作成とその提出手続の代理であり、税務書類の作成や訴訟等の法律事務の代理は、それぞれ税理士法・弁護士法の範囲になります。
| 論点 | 本記事の整理 |
| 行政書士の業務範囲 | 行政書士法第1条の3・第1条の4にもとづく、官公署提出書類等の作成と提出手続の代理(根拠条文つきで後述) |
| できないこと | 税務書類の作成・税務相談(税理士法の範囲)、訴訟等の法律事件に関する法律事務の代理(弁護士法の範囲) |
| 報酬 | 2003年前後の規制緩和以降、士業の報酬基準は自由化されており全国一律の公定価格はありません。本記事では金額を断定しません |
| 日本政策金融公庫への申請 | 行政書士等に依頼しなくても、申請者本人が電話相談・予約相談・インターネット申込を通じて直接申請できます |
本記事は行政書士法・税理士法・弁護士法(いずれもe-Gov法令検索)、日本行政書士会連合会、日本政策金融公庫の公式情報にもとづいて構成しています。出典のない報酬額の断定や、実在しない依頼者の「成功事例」は掲載していません。
行政書士とは|行政書士法が定める使命と職責
行政書士は、行政書士法にもとづく国家資格者です。同法第1条は行政書士の使命を「その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資すること」と定めています。第1条の2では、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して公正かつ誠実に業務を行うことが職責として定められています。
行政書士になるには、行政書士試験に合格するか、弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する、あるいは国や地方公共団体の公務員として行政事務等を通算20年以上(高卒者等は17年以上)担当した実績が必要です(行政書士法第2条)。未成年者や、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、一定の刑罰・懲戒処分を受けてから期間が経過していない者などは登録できません(同法第2条の2)。
出典:e-Gov法令検索「行政書士法」第1条・第1条の2・第2条・第2条の2(2026年9月16日確認)
行政書士の業務範囲|行政書士法第1条の3・第1条の4が定める内容
3種類の書類の作成(行政書士法第1条の3)
行政書士法第1条の3は、行政書士が「他人の依頼を受け報酬を得て」作成できる書類を、次の3種類と定めています。
| 区分 | 内容 | 主な例 |
| 官公署に提出する書類 | 許認可の申請書など、官公署(省庁・都道府県庁・市区町村役場・警察署等)に提出する書類 | 創業計画書、各種許認可申請書 |
| 権利義務に関する書類 | 権利の発生・存続・変更・消滅の効果を生じさせる意思表示を内容とする書類 | 契約書、遺産分割協議書、示談書 |
| 事実証明に関する書類 | 社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる書類 | 実地調査に基づく図面、会計帳簿、財務諸表 |
他の法律で制限されている業務は行えない
行政書士法第1条の3第2項は「行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と定めています。税務書類の作成のように、他の法律(税理士法など)で特定の資格者にのみ認められている業務は、この規定により行政書士が行うことはできません。
提出手続の代理・相談業務(行政書士法第1条の4)
行政書士法第1条の4は、上記の書類作成に加えて、次の業務を報酬を得て行うことができると定めています。
- 官公署に提出する書類を提出する手続の代理、および許認可等に関して行われる聴聞・弁明の機会の付与の手続等における官公署への対応の代理(ただし弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く、と条文上明記されています)
- 許認可等に関する審査請求・再調査の請求・再審査請求等の不服申立て手続の代理、およびその手続に関する書類の作成(この業務は、日本行政書士会連合会が定める研修を修了した「特定行政書士」に限り行うことができます)
- 契約その他に関する書類の代理人としての作成
- 行政書士が作成できる書類の作成についての相談
出典:e-Gov法令検索「行政書士法」第1条の3・第1条の4(2026年9月16日確認)、日本行政書士会連合会「行政書士の業務」
創業融資の相談で行政書士ができること・できないこと
上記の条文をふまえ、創業融資の場面に即して整理すると次のとおりです。
| 区分 | できること/できないこと | 根拠 |
| 創業計画書・事業計画書の作成 | できる(官公署に提出する書類の作成) | 行政書士法第1条の3 |
| 日本政策金融公庫・信用保証協会に提出する申請書類の作成 | できる(官公署に提出する書類の作成) | 行政書士法第1条の3 |
| 申請書類を窓口に提出する手続の代理 | できる(弁護士法72条の法律事務に該当しない範囲) | 行政書士法第1条の4第1号 |
| 確定申告書・決算書など税務書類の作成、税務相談 | できない(税理士業務) | 税理士法第2条・第52条 |
| 融資条件をめぐる交渉の代理、審査結果に関する紛争の代理など法律事件に関する法律事務 | できない(弁護士の独占業務) | 弁護士法第72条 |
| 許認可等に関する審査請求・不服申立ての代理 | 「特定行政書士」の資格を持つ者のみできる | 行政書士法第1条の4第2項 |
| 融資の採択を保証・確約すること | 誰にもできない(採択の可否は金融機関・保証協会が審査で決定) | — |
税理士法第2条は、税務代理・税務書類の作成・税務相談を「税理士業務」と定め、同法第52条は税理士又は税理士法人でない者がこの業務を行うことを禁じています。確定申告書の作成や、税務上の各種届出書の作成・相談は、行政書士ではなく税理士の業務範囲です。
また弁護士法第72条は、報酬を得る目的で訴訟事件・非訟事件・行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを、弁護士又は弁護士法人でない者に禁じています。融資審査の結果をめぐって金融機関と法的に争う場面などは、この範囲に含まれ得ます。
無資格者が報酬を得て書類作成を代行することは違法
行政書士法第19条は「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない」と定めています。行政書士登録のない者が報酬を得て創業計画書等の作成代行を行うことは、この規定に違反する可能性があります。依頼前に登録の有無を確認する方法は後述します。
出典:行政書士法第1条の4・第19条、税理士法第2条・第52条、弁護士法第72条(いずれも2026年9月16日確認)
日本政策金融公庫は行政書士に頼まなくても直接申請できる
創業融資の代表的な調達先である日本政策金融公庫は、行政書士等の専門家に依頼しなくても、申請者本人が直接申し込める手続を公式サイトで案内しています。公式の「お手続きの流れ(創業予定の方)」ページによれば、標準的な流れは次のとおりです。
| ステップ | 内容 |
| 1. 電話相談 | 事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)で融資制度や手続について相談できる |
| 2. 予約相談(任意) | 申込み前にオンラインや支店窓口での相談を予約できる |
| 3. インターネット申込 | 24時間365日、申請者本人がオンラインで申込める。創業計画書・本人確認書類等を電子データで準備する |
| 4. 面談 | 資金の使いみちや事業計画について話を伺う面談(オンライン面談も可) |
| 5. 契約・融資実行 | 審査後、契約手続を経て指定口座に送金される |
出典:日本政策金融公庫「お手続きの流れ(創業予定の方)」(2026年9月16日確認)
専門家への依頼は申請の前提条件ではない
上記のとおり、電話相談・予約相談・インターネット申込のいずれも申請者本人が利用できる形で案内されており、行政書士など専門家への依頼が申請の前提条件とはされていません。行政書士に依頼する場合でも、実際に手続を行うのは書類の作成・提出手続の代理という範囲であり、事業計画の内容そのものや資金使途の妥当性は申請者自身が把握しておく必要があります。
創業計画書の書き方そのものについては事業計画書の書き方の記事で解説しています。信用保証協会を経由した制度融資については信用保証協会の創業融資の記事をご覧ください。
行政書士への報酬はいくら?公定価格がない理由
行政書士を含む士業の報酬は、2003年前後の規制緩和以降、各士業会の報酬規程(会則)が撤廃され自由化されています。現在は行政書士ごとに報酬額を個別に設定する仕組みになっており、全国一律の「公定価格」や「相場」と呼べる公式な基準は存在しません。
本記事では報酬の金額を掲載しません
報酬が自由化されている以上、特定の金額を「相場」として提示すると、実際の依頼先の設定額と大きく異なる可能性があります。当サイトでは出典のない金額の断定を避けるため、報酬額そのものは掲載していません。依頼を検討する場合は、複数の行政書士事務所から個別に見積もりを取り、金額の内訳(着手金・成功報酬の有無、対象となる業務範囲など)を契約前に書面で確認することをおすすめします。
許認可申請と融資関連書類の作成をあわせて依頼する場合、事務所によっては一括見積もりに対応していることがあります。一括依頼が費用面で有利かどうかは事務所ごとの料金設定次第のため、個別に確認が必要です。
依頼前に行政書士の登録を確認する方法
行政書士として業務を行うには、日本行政書士会連合会の行政書士名簿への登録が必要です(行政書士法第6条以下)。前述のとおり、登録のない者が報酬を得て書類作成代行を行うことは行政書士法第19条に違反する可能性があるため、依頼前に登録の有無を確認しておくと安心です。
| 確認方法 | 確認できる内容 |
| 日本行政書士会連合会「行政書士会員検索」 | 氏名・登録番号・事務所所在地・所属行政書士会・特定行政書士(不服申立ての代理ができる研修修了者)かどうか等 |
出典:日本行政書士会連合会「行政書士会員検索」(2026年9月16日確認)
会員検索では、氏名や登録番号、事務所の都道府県、取扱い業務(会社・法人、中小企業支援など)から行政書士を絞り込んで検索できます。融資関連の書類作成を依頼する前に、登録番号が実在すること、事務所所在地が名刺やウェブサイトの表記と一致していることを確認しておくと、無登録者とのトラブルを避けやすくなります。
税理士との違い|どちらに相談すべきか
行政書士と税理士は、根拠となる法律も業務範囲も異なる別の国家資格です。創業融資の相談先として比較する場合の主な違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 行政書士 | 税理士 |
| 根拠法 | 行政書士法 | 税理士法 |
| 創業計画書・許認可申請書の作成 | できる(行政書士法第1条の3・第1条の4) | 税理士も財務書類の作成等は可能だが、許認可申請は業務範囲外 |
| 確定申告書等の税務書類作成・税務相談 | できない(税理士法の範囲) | できる(税理士法第2条) |
| 開業後の記帳代行・税務顧問 | できない | できる |
| 許認可(建設業・飲食店等)が必要な業種の一括対応 | 許認可申請とあわせて対応できる場合がある | 許認可申請そのものは対応できない |
飲食店・建設業・介護事業など許認可の取得が必要な業種で、許認可申請と融資関連の書類作成を一括して依頼したい場合は行政書士が選択肢になります。一方、開業後の記帳や税務申告まで継続してサポートしてほしい場合は税理士が対応範囲になります。行政書士と税理士の役割分担について詳しくは税理士への依頼に関する記事もあわせてご確認ください。
行政書士に相談する際の確認ポイント
創業融資の相談先として行政書士を検討する際に、事前に確認しておきたいポイントを整理しました。
- 登録の有無:日本行政書士会連合会の会員検索で、登録番号・事務所所在地が実在するか確認する
- 業務範囲の説明が正確か:税務書類の作成や税務相談まで対応できるかのように説明する事務所には注意する(税理士法の範囲を超える可能性がある)
- 採択を確約していないか:融資の採択は金融機関・保証協会の審査で決まるため、採択を保証する説明には注意する
- 見積もりの内訳が明確か:着手金・成功報酬の有無、対象となる業務の範囲を契約前に書面で確認する
- 許認可申請の実績:自分の業種に必要な許認可(建設業、飲食店の食品衛生許可など)の取扱い実績があるか確認する
融資の相談窓口をかたる悪質な業者への注意点は悪質な融資コンサルの記事で解説しています。外国人が日本で創業する場合の在留資格の取扱いは、申請取次の届出をした行政書士が対応できる場合があります。詳しくは外国人の創業融資の記事をご覧ください。
創業融資について専門家に無料で相談する
行政書士への依頼が向いているかどうかは、必要な許認可の有無や、開業後の税務サポートの要否によって変わります。当サイトでは、行政書士・税理士・中小企業診断士など、創業融資の相談に対応する専門家をご案内しています。融資コンサルタントとの違いについては創業融資コンサルの記事もご参照ください。
依頼先や契約内容によって対応範囲・報酬体系はさまざまです。依頼を検討する場合は、複数の専門家から個別に説明を受けることをおすすめします。