ECサイト・ネットショップの創業融資|日本政策金融公庫の活用法【2026年完全ガイド】
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公開: 2026年4月8日
更新: 2026年9月16日
読了目安: 3分
ECサイト・ネットショップの創業融資とは|日本政策金融公庫を中心に整理する
この記事の結論
ECサイト・ネットショップの創業融資を、日本政策金融公庫の公式情報にもとづき解説。新規開業・スタートアップ支援資金の限度額・金利、特定商取引法の表示義務、古物商許可、景品表示法の注意点まで、出典付きで整理しました。
ECサイト・ネットショップ(自社EC・Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング等)の開業では、商品の仕入れ・ECサイトやカートシステムの構築・広告出稿などの支払いが先に発生し、売上の入金がそれに遅れて発生しやすいという特徴があります。この資金繰りを支える手段のひとつが、日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資です。
一方でEC事業には、通信販売事業者としての表示義務(特定商取引法)、中古品・リユース品を扱う場合の許可(古物営業法)、広告表現の規制(景品表示法)など、業種特有の法令対応があります。融資の審査でもこうした法令対応の状況を事業計画に反映しておくことが望まれます。本記事は、公庫の公式サイトと所管省庁(消費者庁・警察庁所管の古物営業法)の公式情報だけを根拠に整理したものです。公式資料で確認できない数値は、そのつど「確認できません」と明記します。
この記事でわかること
- EC開業の資金調達の内訳・全国平均(公庫「新規開業実態調査」。EC単体の内訳データは非公表)
- 特定商取引法にもとづく通信販売事業者の表示義務(消費者庁)
- 中古品・リユース品を仕入れて販売する場合に必要になることがある古物商許可(古物営業法)
- 景品表示法の注意点(優良誤認表示・有利誤認表示・ステルスマーケティング規制)
- 公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額・金利・返済期間
EC開業の資金調達の内訳|公庫「新規開業実態調査」の全国平均
日本政策金融公庫総合研究所は、1991年度から毎年「新規開業実態調査」を実施しています。2025年度調査(2025年12月5日公表、融資時点で開業後1年以内の企業を対象に郵送調査、有効回答2,165社)によると、開業費用の平均値は975万円、開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。内訳は「金融機関等からの借り入れ」が平均827万円(構成比67.9%)、「自己資金」が平均279万円(同22.9%)です。
| 資金調達先 | 平均額 | 構成比 |
| 自己資金 | 279万円 | 22.9% |
| 金融機関等からの借り入れ | 827万円 | 67.9% |
| 配偶者・親・兄弟・親戚 | 53万円 | 4.3% |
| 友人・知人等 | 41万円 | 3.4% |
| その他 | 19万円 | 1.6% |
| 調達額合計 | 1,219万円 | 100% |
出典: 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)。上表は全業種の平均値であり、EC・ネットショップ単体の平均額ではありません。自己資金22.9%・借り入れ67.9%は調査資料に明記された数値、残る3項目の構成比は資金調達額の合計に対して当サイトが算出した参考値です。
開業業種に占める「小売業」の位置づけ
同調査で開業業種を尋ねた設問では、2025年度は「サービス業」が27.7%で最も多く、「小売業」は11.8%でした。ただし、この調査の「小売業」区分には持ち帰り・配達飲食サービス業も含まれる独自の定義で、ECサイト・ネットショップだけを切り出した集計ではありません。
EC単体の開業費用データについて
自社EC・Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングなど、EC・ネットショップ単体に絞った開業費用や自己資金の公式な平均データは、2026年9月時点で確認できませんでした。仕入れ商材・プラットフォーム・物流体制によって必要資金は大きく変わるため、具体的な金額は事業計画書の作成段階で個別に見積もることをおすすめします。
EC事業で必要になる資金の費目|仕入れ・システム・広告・物流
EC事業の資金計画では、金額そのものより先に「何の費用か」「設備資金・運転資金のどちらにあたるか」を整理しておくことが重要です。公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の資金使途は「新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金」とされています。代表的な費目を、資金区分の目安とあわせて整理しました。
| 費目 | 主な使いみち | 資金区分の目安 |
| 仕入れ資金(初回在庫・継続仕入れ) | 商品の仕入れ・輸入・OEM発注 | 運転資金 |
| ECサイト構築費・カート/決済システム導入費 | 自社ECサイトの制作、決済代行の導入 | 設備資金 |
| 広告費(開業当初の先行投資分) | 集客・広告出稿 | 運転資金 |
| 物流・倉庫費 | 保管設備の整備、梱包資材、配送体制の構築 | 設備資金・運転資金(内容による) |
| 法令対応費用 | 特定商取引法の表示整備、古物商許可の申請手続き等 | 運転資金 |
具体的な金額について
費目別・プラットフォーム別(自社EC・Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング等)の開業費用を横断的に示した公式統計は、2026年9月時点で確認できませんでした。プラットフォームごとの出店料・販売手数料・入金サイクルは各社の公式サイトで随時見直されるため、事業計画書には申込時点の最新条件を確認のうえ記載することをおすすめします。
特定商取引法に基づく表示|通信販売事業者の義務(消費者庁)
新聞・雑誌・インターネット等で広告し、郵便や電話、インターネット等で申込みを受ける取引は「通信販売」として特定商取引法の規制対象になります。個人であっても、営利の意思をもって反復継続して取引を行っていれば「販売業者」に該当するとされています。ECサイト・ネットショップの多くはこの通信販売にあたります(海外向け販売など一部は適用除外です)。
広告に表示すべき事項(法第11条)
特定商取引法は、通信販売の広告に表示すべき事項を定めています。主なものは次のとおりです。
- 販売価格(送料についても表示が必要)
- 代金の支払時期・方法
- 商品の引渡時期
- 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨および内容
- 契約の申込みの撤回または解除に関する事項(返品特約がある場合はその内容を含む)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
- 引き渡された商品が契約内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定め
消費者からの請求に応じて遅滞なく書面(インターネット通販では電子メールでも可)を提供できる体制がある場合は、一部の表示事項を広告上で省略できる特例もあります。省略の可否は表示事項ごとに条件が異なるため、詳細は消費者庁「特定商取引法ガイド」で確認してください。
返品・契約解除に関する定め(法第15条の3)
通信販売では、事業者が広告であらかじめ返品特約を表示していない場合、消費者は商品の引渡しを受けた日から8日以内であれば、消費者の送料負担で契約の申込みの撤回・解除(返品)ができます。事業者が返品の可否や条件を広告に明示している場合は、その特約が優先されます。
表示義務違反の扱い
広告表示義務(法11条)や誇大広告等の禁止(法12条)に違反した事業者は、業務改善の指示(法14条)や業務停止命令(法15条)などの行政処分の対象となり、一部は罰則の対象にもなります。開業前にECサイトの特定商取引法に基づく表示ページを整備しておくことをおすすめします。
中古品・リユース品を仕入れて販売するEC事業は古物商許可が必要になる
古物営業法は、盗品等の売買防止・速やかな発見を目的とした法律です。同法第2条は「古物」を「一度使用された物品」または「使用されない物品で使用のために取引されたもの」等と定義しており、これらを売買・交換する営業(古物営業)を行う者は、第3条により都道府県公安委員会の許可(古物商許可)を受けなければならないとされています。
中古品・リユース品・ブランド古着・中古家電・せどり(他者から仕入れた中古品の転売)などをECサイトで仕入れて販売するビジネスモデルは、この「古物営業」に該当する可能性が高く、開業前に許可を得ておく必要があります。許可申請は、主たる営業所の所在地(営業所がない場合は住所・居所)を管轄する公安委員会に対して行います(第5条)。
無許可営業の罰則
第3条の許可を受けずに古物営業を営んだ者は、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処するとされています(第31条)。創業融資の審査でも、必要な許認可の取得状況を事業計画に明記しておくことが望まれます。
ネット販売を行う場合の追加の届出事項
古物営業法第5条第1項は、許可申請の際に記載すべき事項として、行商(仮設店舗を含む)を行うかどうかの別(同項5号)に加え、取り扱う古物に関する事項をインターネット等の自動公衆送信により公衆の閲覧に供し、その取引の申込みを電気通信の方法により受ける営業形態を用いるかどうかの別、および用いる場合はその送信元を識別するための符号(ホームページのURL等)を定めています(同項6号)。ECサイトで古物を取り扱う場合は、この届出事項に該当することを念頭に申請書類を準備する必要があります。
新品のみを扱う場合の考え方
自社で企画・製造した新品のオリジナル商品(D2C商品)や、メーカー・卸から仕入れた未使用の新品のみを販売する場合は、古物営業法上の「古物」の売買にあたらないのが基本的な考え方です。もっとも、個別の取引が「古物」に該当するかどうかの最終的な判断は、開業予定地を管轄する警察署(古物営業担当)または都道府県公安委員会に確認することをおすすめします。
景品表示法の注意点|優良誤認・有利誤認・ステルスマーケティング規制
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、商品・サービスの品質や取引条件について、実際よりも著しく優良または有利であると見せかける表示を禁止しています。EC事業は商品ページ・広告・SNS投稿など表示の機会が多いため、開業前に主な禁止類型を把握しておくことが重要です。
| 区分 | 内容 | 根拠・施行時期 |
| 優良誤認表示 | 商品・サービスの品質・内容について、実際より著しく優良であると示す表示(例:カシミヤ混用率が低いのに「カシミヤ100%」と表示) | 景品表示法第5条第1号 |
| 有利誤認表示 | 価格その他の取引条件について、実際より著しく有利であると誤認させる表示 | 景品表示法第5条第2号 |
| ステルスマーケティング規制 | 広告であるにもかかわらず、広告であることを消費者が判別困難な形で表示すること | 景品表示法第5条第3号・令和5年10月1日施行 |
出典: 消費者庁「表示規制の概要」「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」
アフィリエイト広告・インフルエンサー起用時の注意
ステルスマーケティング規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示して行う表示も規制対象の「広告」に含まれる一方、依頼を受けた第三者自身は規制の対象になりません。EC事業者がアフィリエイターやインフルエンサーに商品紹介を依頼する場合は、広告であることが一般消費者に判別できる表示(PR表記等)になっているかを確認する必要があります。
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の概要
EC事業の創業融資の中心となるのが、公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。対象は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」で、資金使途は前述のとおり設備資金・運転資金の両方に対応しています。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が10年以内(うち据置期間5年以内)です。
公庫「創業融資のご案内」によると、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で利用でき、利率も基準利率から一律0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げられます。
| 利率区分 | 年利(税務申告2期未終了者・令和8年9月1日現在) |
| 基準利率 | 3.75〜5.35% |
| 特別利率A | 3.35〜4.95% |
| 特別利率B | 3.10〜4.70% |
| 特別利率C | 2.85〜4.45% |
出典: 日本政策金融公庫「金利情報 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」(令和8年9月1日現在)。特別利率の適用には、女性の方・35歳未満または55歳以上の方・認定特定創業支援等事業の証明書取得者など、公庫が定める要件があります。詳細・最新の利率は公庫公式サイトで確認してください。
EC事業の創業融資相談で準備しておきたい資料
EC事業は在庫・仕入れ先・販売プラットフォームなど、対面業種とは異なる観点で事業計画を説明する必要があります。相談前に準備しておくとよい資料の例を挙げます。
準備しておきたい資料の例
- 創業計画書(商品ラインナップ、仕入れ先、販売するプラットフォームの計画を含む)
- 自己資金を確認できる通帳等の資料
- 仕入れ先の見積書・取引条件がわかる資料
- ECサイト構築・システム導入にかかる見積書
- 特定商取引法に基づく表示の準備状況、古物商許可が必要な場合はその取得状況
創業計画書の書き方全般については「事業計画書の書き方」、融資申込みに必要な書類全般については「創業融資の必要書類」も参考にしてください。
EC事業の創業融資でよくある注意点
以前の記事では、具体的な地名・金額を挙げた「成功事例」を紹介していましたが、公表資料で裏付けが取れる内容ではなかったため、本記事では削除し、一般的な注意点として整理し直しました。
- 開業前で売上実績がない場合は、仕入れ先の見積書や取引条件、想定する販売プラットフォームの手数料体系など、事業計画の裏付けとなる資料をそろえておく
- 特定の販売プラットフォームのみに依存する計画になっていないか、複数の販路(自社EC・モール出店等)を検討したうえで事業計画に反映する
- 返品・キャンセル対応の方針(前述の法第15条の3を踏まえた返品特約の設計を含む)をあらかじめ決めておく
- 特定商取引法に基づく表示、古物商許可(該当する場合)、景品表示法にかかわる広告表現の社内チェック体制を、開業前に整えておく
信用保証協会の保証付融資など、公庫以外の公的制度もあります。制度ごとに保証料率・融資限度額は異なるため、詳しくは「信用保証協会の創業融資とは?」を参照してください。融資と補助金をあわせて検討したい場合は「融資と補助金の併用ガイド」も参考になります。
EC事業の創業融資について専門家に相談する
EC事業の創業融資は、仕入れ・システム・広告・物流といった費目の整理に加え、特定商取引法・古物商許可・景品表示法などの法令対応状況もあわせて説明できると、事業計画の実現可能性が伝わりやすくなります。事業計画書の作成や融資の進め方について不安がある場合は、専門家に相談することもひとつの方法です。融資代行・専門家への依頼費用の目安は「創業融資代行の費用相場」を参照してください。
相談・診断は無料です。融資の実行や審査結果を保証するものではありません。
出典・参考情報
最終更新日: 2026年9月16日。金額・利率・制度内容、法令の解釈は変更される場合があります。融資のご検討・法令対応にあたっては、必ず各公式サイト・窓口(公庫、消費者庁、開業予定地を管轄する警察署・公安委員会等)で最新情報を確認してください。本記事は融資の採択や条件を保証するものではありません。